営業効率を上げて、LTVを最大化させる「The Model(ザ・モデル)」とは?概要から実践方法まで徹底解説
近年、新規事業としてSaaS型のサブスクリプションサービスを始める企業が増えてきています。SaaS型のビジネスを成功させるためには、営業活動を分業し、活動効率とLTVの最大化を図る「The Model(ザ・モデル)」型の営業組織の構築が不可欠です。本記事では、The Modelの基本概念、実践方法、注意点、運用に必要なツールをご紹介します。これからThe Modelの概念を取り入れようとしている方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
The Model(ザ・モデル)とは?
The Model(ザ・モデル)とは、セールスフォース・ドットコムで実践されてきた営業プロセスモデルです。これまで営業担当者が1名で担ってきた一連の営業活動を、The Modelではリード獲得、提案、交渉、受注後のサポートへ細分化し、各領域ごとに担当者を振り分けて実践していきます。
セールスフォース・ドットコムでは、The Modelを「お客様の成功と共に、売上を拡大する仕組み」としています。営業活動が分業化されることで、スピーディにPDCAサイクルを回すことができます。さらに、各プロセスの専門性や効率性が上がることで、売上拡大はもちろん、顧客満足度の向上も期待できます。
また、サブスクリプション型のサービスを提供していることの多いSaaS企業では、LTV(顧客生涯価値)の最大化が売上増大の鍵となります。そのため、受注後はカスタマーサクセスと呼ばれる定着支援をおこなう部門が、顧客満足度を上げて継続利用やアップセル、クロスセルを促す重要な役割を担っています。
【The Modelの概要】
- 営業プロセスを「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」の4部門に切り分け、各段階での情報を数値化・可視化する
- 各段階を担当する部門間が連携し、一連のプロセスの効率化、顧客満足度の向上を図る
- カスタマーサクセスを追求して解約を防ぎ、クロスセルやアップセルのチャンスを増やす
The Modelの売れる仕組みとは?
The Modelでは、営業に必要なプロセスを「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス(外勤営業)」「カスタマーサクセス(定着化支援)」の4つに分類します。各部門がそれぞれの担当業務を遂行し、次の部門へ業務をパスしていきます。このようにリード獲得から受注/定着支援まで連携を取りながら売上を構築する仕組みがThe Modelの売れる仕組みです。
それぞれの部門は目標を持っており、そのゴールが次の部門の母数となります。売上を最大化させるためには、各部門が目標数値を確実に達成し、次の部門へパスする必要があります。部門ごとに目標が設定されているので、最終的に売上が目標に達しなかった場合、どの部門の活動に問題があったかすぐに分かります。
【The Modelの売れる仕組み】
- 分業による効率化
- KPIの徹底的な追跡
- 全行程の活動を記録
The Model型の営業組織とは
ここでは、The Modelで分類した、4つの部門「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」の特徴と役割を解説します。
1. マーケティング
マーケティング部門は案件受注までのプロセスにおいて、入り口に位置します。従来のマーケティングでは、あらゆる情報が個人情報と引き換えに提供されてきました。しかし、インターネットが普及し情報が溢れ出してからは、情報の収集と選択の主導権が顧客に移りました。そのため、企業は情報公開の幅を広げ、詳細を希望する顧客のみ個人情報を取得していく流れになっています。
そのため、The Modelのマーケティング部門が追うべき目標は「潜在顧客の獲得」であり、設定するKPIは以下の通りです。
<マーケティング部門のKPI>
- 母数:来訪者数
- 成功率:獲得率
- ゴール:見込客数
2. インサイドセールス
インサイドセールス部門では、マーケティング部門が獲得した見込み客に対して電話営業をおこない、フィールドセールスに繋げます。インサイドセールス部門のゴールは受注確度の高い見込み客とアポイントを獲得することであり、追うべきKPIは案件化率、案件数です。
インサイドセールス部門の活動は電話になるため、稼働時間に制限があります。そのため、いかに効率よくマーケティング部門からパスされてきたリストの中から、確度の高い見込み客を発見できるかが重要です。確度の高い見込み客を効率よく探す方法として、マーケティングオートメーションツールを活用した顧客行動の測定や分析があります。
また、インサイドセールス部門では顧客から電話で聞いた情報をもとに、マーケティング部門へ戻したり、インサイドセールス部門で育成したりなどの役割も担っています。
<インサイドセールス部門のKPI>
- 母数:見込客数
- 成功率:案件化率
- ゴール:案件数
3. フィールドセールス
インサイドセールス部門からパスされてきた顧客に対し、受注に向けて本格的に提案、交渉活動をしていくのがフィールドセールス部門です。インサイドセールス部門の活動が電話営業であるのに対し、フィールドセールス部門の活動は客先へ出向いて(最近ではオンラインミーティングで)顧客対応をおこなうことです。フィールドセールスのプロセスでは受注率、受注数がKPIとなります。
<フィールドセールス部門のKPI>
- 母数:案件数
- 成功率:受注率
- ゴール:受注数
4. カスタマーサクセス
カスタマーサクセス部門では、成約後の顧客に対してサポートを実施し、顧客満足度や顧客体験の向上を目指します。これらが向上されることで製品や企業への信頼関係が構築され、継続的な契約やアップセル、クロスセルに繋がります。そのため、カスタマーサクセス部門のKPIは契約更新率と継続契約数となります。
また、カスタマーサクセス部門はユーザーと直接意見を交換できる立場にあるため、開発チームへユーザーの声を届ける役割も担っています。
<カスタマーサクセス部門のKPI>
- 母数:受注数
- 成功率:契約更新率
- ゴール:継続契約数
The Modelを実践するメリット
営業活動を分業化すると効率よくリード獲得から受注までできるThe Modelですが、具体的には、何が効率化されどのようなメリットがあるのでしょうか。ここではThe Modelを実践するメリットを4つご紹介します。
専門性を高めて機会損失を防ぎ、プロセスの効率化を図れる
営業活動のプロセスを分業化させることで、各プロセスの担当者が業務に集中しながら専門性を高められます。1名体制の営業活動では手薄になりがちな浅いフェーズの見込み客への対応を手厚くしたり、対応できる見込み客の数を増やしたりすることができます。また、受注後の顧客に関しては、信頼関係を構築して継続率を上げ、クロスセル、アップセルで売上増加に繋げられます。
改善ポイントを可視化し、高速でPDCAサイクルを回せる
The Modelでは部門ごとにKPIを設定します。部門ごとに達成度が数字で可視化されるため、営業活動における一連の流れの中でどの部分に原因があるかすぐに特定できます。数字と向き合い、スピーディーにPDCAサイクルを回せるので、強い営業組織を構築することが可能です。
顧客情報や活動の進捗を記録し、属人化を防ぐ
The Modelでは顧客情報を部門を跨いで共有し、連携しながら営業活動をおこないます。顧客情報や営業の進捗や活動状況が記録として残るため、属人化を防止できます。そのため、異動、休職、転職などで担当者が入れ替わる際もスムーズに引き継ぎができます。また、中途採用で入ってきた社員も必要な情報にアクセスでき、スピーディにキャッチアップすることが可能となります。
効率的に再アプローチし、受注に繋げられる
見込み客は興味関心があるレベルの人から購買意欲があるレベルの人まで様々です。また、一度購買を検討したけれど、何かしらの理由で購買に至らなかった人もいるでしょう。購買に至らなかった場合でも再アプローチの方法やタイミングが合えば再度検討し、最終的に購買する可能性があります。The Modelでは接触した顧客の情報が記録として残されているため、これらを活用して効率的に再アプローチを測り、受注に繋げていくことができます。
The Modelを実践する上での注意点
営業活動を分業化するだけでは、The Modelを成功させることはできません。ここでは、The Modelを実践していく上での注意点を3つご紹介していきます。
部門同士の情報共有を定期的におこなう
営業活動の分業は部門内の専門性や効率を高めるメリットがある一方で、各部門ごとに業務が分断されてしまい、部分最適に走ってしまうリスクがあります。The Modelを成功させるためには、部門同士の連携が不可欠です。そのためには、共通の数値目標を持ち、顧客情報や数字情報だけではなく活動内容や活動進捗の共有も定期的に実施することが大切です。
次の部門へパスする際のルールを明確化する
The Modelでは、マーケティングからインサイドセールスへ、インサイドセールスからフィールドセールスへ、フィールドセールスからカスタマーサクセスへと顧客のフェーズをもとに顧客をパスしていきます。
分業の効率を最大化させるポイントは、他部門へパスする際の基準を明確にしておくことです。基準がないと、状態がバラバラの顧客が引き渡されることになり、パスされた部門での対応が煩雑になります。基準を決める際は、「誰が」「どのような状態になったら」「何をすべきか」を意識して決めるといいでしょう。
顧客情報や行動を管理できるツールを使用する
顧客情報の一元管理はThe Modelを実践していく上で欠かせません。情報を一元管理し、可視化、分析できるのが、CRM(顧客関係管理システム)やMA(マーケティング・オートメーション)といったツールです。これらを導入することで、顧客を他部門へ引き渡す際に情報を漏れなく、効率的に伝達できます。また、蓄積されたデータをもとにマーケティング戦略やセールス戦略をブラッシュアップしていくことが可能です。各ツールについては次の章で詳しく解説していきます。
The Modelの実践に役立つツール
CRM、CSM、MAを活用することで、顧客情報や行動を管理・可視化できます。ここでは、各ツールの役割の解説とおすすめのサービスをご紹介していきます。
CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)
CRMとは、「カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(Customer Relationship Management)」の略で、直訳すると「顧客関係管理」を意味し、その手法を指します。しかし、最近では顧客関係を管理できるシステムも「CRM」と呼んでいます。
CRMを導入することで顧客情報を一元管理できるようになり、属人化を防ぎ、他部門との共有がスムーズにおこなえます。CRMに登録された顧客情報は、顧客と直接接しているインサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスだけではなく、マーケティングや開発にも役立ちます。
それぞれの部門、そして事業全体で顧客との関係性を向上するための施策を考え、実行できるため、CRMは顧客満足度や売上向上に大いに役立ちます。
また、CRMに似た言葉として「SFA(セールス・フォース・オートメーション=Sales Force Automation)」があります。日本語では「営業支援システム」と呼ばれており、顧客ごとの商談情報、商談の進捗状況、見積書作成などの営業活動にまつわる情報の管理と分析、書類作成ができるツールです。CRMによってはSFA機能もついており、The Modelを実践している企業は2つの機能をうまく併用して、営業活動を効率化させています。
【おすすめのSFA/CRM】Salesforce Sales Cloud
Salesforce Sales Cloud(セールスフォース・セールス・クラウド)は世界で15万社以上への導入実績がある、世界で最も使用されているCRMです。顧客管理だけではなく、営業が商談を開始してから受注に至るまでの進捗状況を可視化し、その活動の管理もおこなえます。登録された顧客や営業活動に関するデータを様々な角度から抽出/分析ができるため、営業活動の効率化を図れます。
公式サイト:https://www.salesforce.com/jp/
【おすすめのSFA/CRM】HubSpot
HubSpot(ハブスポット)は、The Modelを実践していく上で必要なCRM、CMS(サイト構築)、MA(マーケティングオートメーション)が全て搭載された、オールインワン型のマーケティングツールです。顧客の課題やニーズを反映させたコンテンツをすぐにウェブサイトへ掲載できるため、リード獲得フェーズにも強みを持つCRMです。また、無料プランもあるため、立ち上がったばかりの新規事業やスタートアップ企業でも導入しやすい点もポイントです。
公式サイト:https://www.hubspot.jp/
CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)
CMSとは、「コンテンツ・マネジメント・システム(Contents Management System)」の略で、ウェブサイトを構築するためのシステムです。ウェブサイトはCMSがなくてもHTMLやCSSを用いて1ページずつ制作できますが、CMSを導入することでウェブサイトで使っているデザイン、レイアウト、画像などを一元管理し、複数のページで共有することが可能になります。
CMSによっては、コーディングに関する専門的な知識がなくても、管理画面で必要なパーツをドラッグ・アンド・ドロップすることで簡単にウェブサイトを制作できます。
【おすすめのCMS】Wordpress
WordPress(ワードプレス)は無料で使えるCMSで、有名企業から個人まで幅広く利用されています。現在、全世界のウェブサイトの1/4がWordpressで作られていると言われてるほど、圧倒的なシェアを獲得しています。WordpressではHTMLやCSSを用いて完全オリジナルなウェブサイトを構築できます。HTMLやCSSの知識がそれほどなくても、Wordpress用に作られている「テーマ」と呼ばれるテンプレートを利用することで本格的なウェブサイトを作れます。
公式サイト:https://wordpress.com/ja/
【おすすめのCMS】ferretOne
ferretOne(フェレットワン)は誰でも簡単にウェブサイトを制作できる、コードいらずのCMSです。ウェブサイトの構築だけではなく、問い合わせ管理、メール配信などの機能もついています。また、アナリティクス機能もついているため、ウェブマーケティング施策の効果測定ができ、PDCAサイクルを回しやすいのが特徴のCMSです。
公式サイト:https://ferret-one.com/
MA(マーケティングオートメーションシステム)
MAとは、「マーケティング・オートメーション(Marketing Automation)」の略称で、マーケティング活動を自動化し、見込み客を育成するためのツールを指します。
MAツールでは、「顧客情報の収集・蓄積」「見込み顧客の育成」「マーケティング施策の分析」を自動化によって実現します。具体的には、顧客がウェブサイトを訪問した回数やメールを開いた回数を情報として収集・蓄積し、見込み客をスコアリングします。スコアリングされた情報をもとに顧客へアプローチし育成を図ります。
例えば、特定のアクションを起こした見込み客に対して、購買意欲を促進するメールをMAツールから自動で送信することができます。また、蓄積された行動をもとにアプローチ方法を改善していけるので、自動化による効率化以上の効果を得ることができます。
【おすすめのMA】Marketo Engage
Marketo Engage(マルケト・エンゲージ)は、世界5,000社以上に導入されているMAツールです。日本国内でも大企業からスタートアップまでBtoB、BtoC問わず利用されています。自動メール配信や見込み客のスコアリングの他に、社内のオペレーション関連の設定もできる点が特徴です。また、Marketo Engageは、見込み客の認知から購買、ファン化や再購入に至るまでの関係構築が可能で、長期的なエンゲージメント施策の設計に向いています。
公式サイト:https://jp.marketo.com/
【おすすめのMA】SHANON MARKETING PLATFORM
SHANON MARKETING PLATFORM(シャノン・マーケティング・プラットフォーム)は900社以上の導入実績を持つ、国内のMAツールです。見込み客の情報管理だけではなく、イベントやセミナーを実施、管理する機能が充実している点が特徴です。リマインドメールの配信などのセミナー運営業務を自動化し、間接コストの削減に貢献します。
公式サイト:https://www.shanon.co.jp/
顧客満足度を向上し、LTVを最大化するThe Model
The Modelはサブスクリプション型のSaaS企業には欠かせない営業の仕組みです。本記事ではThe Modelの概要や実践方法について解説しましたが、忘れてはならないのが「顧客の成功が自社の利益」からThe Modelが生まれているということです。
分業や業務効率化は自社のためではなく、顧客満足度を向上させるためのアクションであることを念頭に営業活動をおこない、PDCAサイクルを回すことがThe Model型の営業組織を成功させる近道です。
ぜひセールスフォース社が実践し、大切にしているThe Modelの概念を自社に取り入れ、LTVの最大化と効率的な営業活動を実現し、事業成長に繋げてください。
Airz Marketingでは、The Modelの実戦経験が豊富なコンサルタントが多数在籍しています。営業組織の立ち上げや改善でお困りのことがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。