事業計画について議論する会社員

昨今、SaaS事業の新規事業開発が活発におこなわれていますが、失敗事例も多数あります。そのため、SaaS事業の失敗理由や市場動向が気になっている方もいるのではないでしょうか?

本記事ではSaaS市場の現状を明らかにし、SaaS事業が失敗してしまう理由について事例とともに解説します。また、SaaS事業の成功率を上げるためのポイントも紹介していくので、新規事業を起ち上げる際にはぜひ参考にしてください。

目次

SaaS市場のトレンド

まずはSaaS市場の現況を確認しておきましょう。

SaaS市場の規模と成長傾向

SaaSの市場規模は急速な成長を続けています。スマートキャンプ株式会社の運営するBOXIL SaaSの「SaaS業界レポート2021」によると、日本のSaaS市場は2020年度に7,818億円でした。年平均成長率は約13%で大きな成長を維持しています。2025年度には2倍の1兆4,607億円になると予想されているため、今後もSaaS事業の領域は市場規模が拡大すると予想されます。

さらに、世界のSaaS市場規模はREPORTOCEAN による報告では2021年に1,441億7,000万米ドルでした。2030年には7,031億9,000万米ドルに到達すると予想されているため、グローバル規模のSaaS事業は今後はさらに広い市場を舞台にできる可能性があります。

SaaS事業の領域は拡大中

市場の拡大の背景にはSaaS事業の領域の拡大が挙げられます。業務システムの活用やスマートフォン・アプリの利用が広がり、SaaSによる新規事業開発が急速に進展しました。典型的なSaaSプロダクトの領域として以下の例があります。

・経営
・営業/マーケティング
・人材開発/採用
・経理/会計
・組織管理

AIの導入やビッグデータの活用が進み、SaaSプロダクトはさらに便利になってきました。オンラインコミュニケーションやリモートワークが浸透した影響もあり、市場ニーズも高騰していることから、様々な領域の課題解決となるSaaSプロダクトが誕生しています。

SaaSプロダクトによる課題解決

SaaSプロダクトではどのような課題解決ができるのでしょうか。各領域における典型的なSaaSプロダクトの特徴を簡単に確認しておきましょう。

経営

・ERPシステム  例)NetSuite、クラウドERP ZAC

経営ではERPシステムが活用されています。ERPシステムは企業のリソースを一元管理するシステムです。業種ごとの特性に合わせたシステムが設計されているため、ヒト・モノ・カネ・情報の最適な配分を円滑におこなえます。リソースの効率化や事業の迅速化の課題を解決するのに有効なSaaSプロダクトです。

営業/マーケティング

・顧客管理システム(CRM/SFA) (例)Salesforce、Hubspot
・マーケティングオートメーション(MA)ツール (例)Adobe Marketo Engage、KARTE

営業やマーケティングでは顧客管理システムやマーケティングオートメーションツールが有名です。顧客情報の管理と運用の課題解決に活用されているSaaSプロダクトです。顧客の購買記録を個別管理するだけでなく、今後の売上の予測を立てたり、自動配信メールで顧客フォローをしたりするなど、様々な機能が搭載されています。

人材開発/採用

・人材管理システム (例)カオナビ、Refcome

人材開発/採用の領域では人材管理システムが利用されています。社員や採用候補者、アルムナイなどの人材をデータベース化して管理できるのが特徴です。人事評価や人材採用の一元管理をして人材を生かす目的で活用できるSaaSプロダクトです。人材マネジメントツールとして広く利用されています。

経理/会計

・会計ソフト (例)マネーフォワード クラウド、freee会計

経理や会計では会計ソフトが典型例です。経理や会計にかかわる一連の業務を連携させて業務効率化を図るのに適しています。帳簿の作成だけでなく、給与計算や確定申告もカバーしているのが一般的です。経費精算システムや勤怠管理システムも統合したSaaSプロダクトもあり、関連業務の一元化の課題も解決できます。

組織管理

・プロジェクト・タスク管理 (例)Trello、Wrike
・スケジュール管理 (例)Googleカレンダー、Timetree
・グループウェア (例)kintone、J-MOTTO
・Web会議 (例)Zoom、Google Meet
・ビジネスチャット (例)Slack、Chatwok
・社内SNS (例)LINE WORKS、THANKS GIFT

組織管理では様々な課題に対して特化したSaaSプロダクトが開発されています。情報許攸の迅速化・円滑化とマネジメント全般の課題解決を実現できるのが特徴です。組織・プロジェクト・部署などの単位での情報共有に活用されています。また、オンラインコミュニケーションを導入してリモートワークを推進する目的でも利用が進められています。

SaaS事業に失敗する5つの理由

SaaS市場が成長を続けている現状を考えると、SaaS事業が失敗する理由が思い浮かばないかもしれません。しかし、SaaS事業には失敗するリスクが高いポイントが5つあります。なぜSaaS事業に失敗するケースがあるのかを確認しておきましょう。

1. 顧客ニーズや市場の理解が不足している

SaaS事業が失敗する典型的な理由として顧客に求められていなかったことが挙げられます。顧客ニーズの理解や市場調査が不足していたために、SaaSプロダクトの開発に成功しても売上が上がらなかったというのが典型例です。競合のプロダクトが圧倒的な信用を獲得している場合には、新規参入をしてもシェアを獲得するのは容易ではありません。顧客と市場の調査に基づき、事業性があるかどうかを正しく判断しなければSaaS事業は失敗します。

2. 市場進出のタイミングが悪い

SaaS事業のローンチのタイミングの見極めを誤ったために失敗している事例は多数あります。タイミングが早ければ市場獲得のチャンスが大きいのは確かです。SaaS事業は人気が高く、スタートアップ企業が次々に登場しています。競合のSaaSプロダクトを開発していることもあるため、後れを取ると失敗のリスクが高くなります。また、市場進出を急いでしまい、顧客の課題解決になるクオリティのSaaSを開発できていなかったのが原因で失敗するケースもあるので注意が必要です。

3. 成功にとらわれて新たに事業を開発しない

SaaS事業で一時的に成功したものの、瞬く間に売上が落ちて失敗する事例もあります。成功にとらわれてしまい、新しいプロダクトを生み出そうとしなかったのが失敗の理由として典型的です。成功事例があるとこだわりが生まれ、新規事業を開発するのをためらいがちです。しかし、SaaS市場は急速に成長しているので、既存のプロダクトが競合プロダクトに取って代わられるリスクが常にあります。最初の成功にしがみつくとSaaS事業は失敗します。

4. 資金調達・資金管理の問題がある

資金面の問題でSaaS事業が失敗する事例はよくあります。経営戦略や事業戦略、ビジネスモデルが不十分では資金調達から失敗します。売上予測が外れて収支計画通りに事業を進められないのも失敗の原因です。新規開発に資金を投下し過ぎて、キャッシュフローに問題が生じることもあります。資金管理が手薄な事業は失敗しやすいので、事業成功の基本として対策が必要です。

5. 組織づくりがうまくいっていない

組織に問題があってSaaS事業が失敗した事例はたくさんあります。組織づくりは企業経営の基本で、SaaS事業に限ったことではありません。適切なタイミングで必要な人材を採用できなかった、チームビルディングに失敗した、組織文化が定着しなかったなどといった理由で事業が失敗することはよくあります。貴重な人材が離れていく原因にもなるため、組織づくりで失敗すると致命傷を負うことになります。

SaaS失敗事例

SaaS事業で失敗した事例は多数あります。ここでは3つの事例を挙げて、どのようなSaaS事業がなぜ失敗したのかを解説します。

ARGYLE

ARGYLEはBtoBに特化したマーケティング支援型のソーシャルメディアツールを開発しました。ARGYLEは事業を開始してから5年目に市場を撤退しています。失敗の原因は競合優位性とリソースの不足でした。

Adobeなどの大手が類似プロダクトを提供している中で、大手SNSのサービス変更に柔軟に対応しながら競争力を付けるのは困難でした。資金調達にも成功せず、ヒトの不足が災いして失敗しています。

RDIO

RDIOはSNS的な要素を持つ「シェア」を重視した音楽配信のSaaS事業を推進して一時は成功したものの、8年で市場を撤退することになりました。競合の動向が変化したにもかかわらず、成功したサービス体系を維持してしまい、顧客が離れていったのが失敗の原因です

無料プランを設ける配信サービスが登場しても、RDIOでは有料プランを継続していました。顧客の離脱を受けて無料サービスを始めましたが、時すでに遅しで事業継続ができなくなっています。

BAWTE

BAWTEは顧客のエンゲージメントを生かすプラットフォームを開発したSaaS事業者です。顧客エンゲージメントは今では重視されていますが、BAWTEがローンチした2011年では新規領域と言える状況でした。

それでも失敗して5年で事業を閉じたのは顧客・市場の理解が不足していたからです。当時は顧客エンゲージメントの課題解決が喫緊の課題とされていませんでした。営業・マーケティングのアプローチとして注目を浴びましたが、価格設定の高さが問題で継続利用する顧客の獲得に失敗しています。市場参入のタイミングが悪く、売上が立たずに資金の問題も生じたのが失敗の原因です。

成功率を上げるための3つのポイント

SaaS事業で失敗する理由がわかれば成功率を上げる方法も見えてきたのではないでしょうか。最後に、SaaS事業の成功率を上げるためのポイントをまとめました。

1. 常に挑戦すること

SaaS事業を成功させるには新規事業領域に挑戦し続けることが大切です。新規事業の着想がなかなか出てこないこともありますが、既存事業からビジネストランスフォーメーションを考えると可能性を見出せます。

既存事業で培ってきたノウハウに新しい技術を導入すればイノベーションになります。顧客ニーズにマッチする技術を生み出すのも重要なポイントです。挑戦には失敗がつきものだと認識した上で常に挑戦し続けることが、SaaS事業の成功率向上につながります。

2. PDCAのスピードを重視すること

SaaS事業の成功率を高めるにはPDCAを迅速に回していくのがポイントです。SaaS市場の進展は急速に進んでいるため、スピード感で競合に優る勢いを維持するのが大切です。計画・実行・評価・改善のPDCAはSaaSプロダクトをニーズに合うところまで成長させるのに欠かせません。

スピード感を持ってPDCAを回し、速やかにシェアを獲得するのが成功のコツです。特に新しい領域でSaaS事業を始める際には競合が登場する前に顧客から支持を得る必要性が高いため、スピードを重視して取り組みましょう。

3. 組織づくりを徹底すること

組織は事業を支える基本なので、組織づくりを徹底するのがSaaS事業で成功を続けていく秘訣です。SaaS事業を継続的に成功させるには、誰もが新規事業の開発に興味関心を持ち、積極的に取り組む組織基盤が欠かせません。経営者、営業、エンジニアなどのあらゆる組織の構成員が一丸になってSaaS事業の成功を目指す組織づくりが大切です。

採用計画を立てて理念やカルチャーに合う適材をタイムリーに迎え入れるのもポイントです。ビジョンや目的を明確にして共通認識を持ち、一緒に事業に取り組んでいきたいとメンバーの誰もが思う環境を作り上げれば成功率が上がります。

失敗から学び、SaaS事業の成功率を上げよう!

SaaS事業には成功例が多い一方で、失敗して撤退している事例もたくさんあります。SaaS市場は発展傾向にあるため、SaaS事業が失敗しているのは事業開発の方が原因です。市場競争が激しく、新規参入も多いSaaS事業は新規事業開発では厳しい領域だとも考えられます。

しかし、SaaS事業はプロダクト内容とタイミングを適切に選んでローンチすれば成功できます。新しい価値を生み出す事業領域として市場が急速に拡大しているのはニーズがあるからです。顧客や市場のニーズを的確に捉えて、価値あるプロダクトの開発をするのが失敗しないための秘訣です。新規開発に挑戦し続けられる組織づくりをしてSaaS事業の成功を目指していきましょう。

Airz Consultingでは、有名SaaS出身のコンサルタントが多数在籍しています。そのため、市場トレンドはもちろんのこと、SaaS事業で成長するための戦略立案や施策実行に関する情報や知見を持っています。SaaS事業に関する課題がある方は、ぜひ一度Airz Consultingへご相談ください